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標本 展足法
発泡スチロール展足   松下泰平 氏
KUWATA 1999年7月  松下泰平の南西諸島を行く 第2回 標本の作り方


(ワイルドプライド刊 KUWATA 1999年7月 p.67〜73 より一部抜粋引用)

採集したクワガタ,どうしてます?

ところで,この本を読んでいるクワガタ好きの方々は,例えば今年これから採集した虫や,記念に残しておきたいほどの特大飼育個体を,いったいどうするつもりでいるのだろうか?


クワガタムシ標本製作(展足)

今回紹介する展足法は土屋利行氏が創意工夫してきた様々なノウハウをちりばめた手順の一部。展足の方法はもちろん他にも何通りかあるが、これを参考に自分なりの展足法を見つけてもらえばいいと思う。




発砲スチロールの板
この展足法は、ほぼ一発で虫の形を決め、固定し、乾燥させる「発砲スチロール展足」と勝手に呼んでいるもので、その名の通り発砲スチロールの板を使用する。小型の電気製品や玩具のパッケージに使われている物でかまわない。


標本針
一般に使われている標本針は、「有頭針」と呼ばれる片側先端が球状になったもので、0号、1号、2号といった具合に数字が大きくなるほど太くなる。展足が完成した標本を標本箱に止める為に一本だけ標本本体に刺す針は、何かの事情で一度抜いてしまうと、場合によっては穴が広がってしまい、次からは針の号数を上げなければならない事もあるので、最初に打つ針は出来るだけ細いにこした事はない。
それに、もし自分のコレクションを転売したり、人の標本と交換したりする場合、不必要に太い針が刺さっていたりすると標本の価値が下がってしまう事もある。

土屋氏は志賀のステンレス有頭針1号を使用している。どんな大型種にもすべて1号針である。しかし、大型の外国産クワガタやカブトムシには、標本箱の中にしっかり固定する為に2号から3号あたりの針を刺す人も多い。それ以上の太さの針も売ってはいるが、とりあえず使う事はないと考えた方がいい。また、同じ号の針でも、厳密に言えば多少太さに違いがあるものなので、針刺し標本を他人に郵送する場合、針を抜いたら必ずその針を標本に添えておくのがマナーである。


ピンセット
小さめのもので、写真にある様なタイプのものが使いやすい。


接着剤
虫の修正には主に「木工用ボンド」を使うが、小型種(ツヤハダ以下)には瞬間接着剤の方がやりやすい。

体表面の汚れ、北等は本工用ボンドで「パック」をして落とす。ただし、スジブトヒラタ、ネブト類など立体的なスジがあり、なおかつ土の中に潜る(あるいは地を這う)習性のある虫の場合は、多少汚れている方が気分が出ると言う人もいる。ヤマトサビクワガタに至っては、なまじパックでサビ(土)を取り除いてしまうといったい何の虫なのか分からなくなってしまうので注意が必要。


平均台
私もこれを初めて目にした時は、「わざわざこんなものが売っているのか」と驚いてしまった。標本に針を打つ時使用し、標本箱に展足した虫をずらりと並べた時、虫の高さ、ラベルの高さを続一させる。
たしかに仕上がりは大変美しく、これは便利なしろものだ。




酢酸エチル
生きたクワガタは酢酸エチルを数滴染み込ませた毒ビンに入れて殺虫する。大型のクワガタでも数分で動かなくなるが、半日くらいは入れたままにしておき、死後硬直が解けたらフ節などをほぐす。

酢酸エチルは防腐作用が強く、単に虫を殺すだけでなく、それが虫の呼吸器官を満たす事で標本を後々まで長持ちさせる効果もある。つまり、自然に死んだ虫は本当はただの死骸、酢酸エチルで殺虫すれば本来の標本と言っていいだろう。虫は「殺す」と同時に「処理」するものなのだ。

虫の種類によっては酢酸エチルのために退色してしまうものもあって、そういった場合は亜硫酸ガスを使用する事もあるが、国産のクワガタムシは酢酸エチルで特に問題はない。処理した虫はタトウなどで保存し、一度乾燥させると後の作業がやりやすいし、展足後の硬化の時間も短縮できる。




いよいよ展足。スチロールを虫の大きさに合わせてへこませ、そこに虫を置いて針で押し付けるように固定する。こうしないと脛節が下を向いてしまい、カッコ悪くなる。カッコ良く仕上げるワンポイント、脛節先端と大腮先端は同じ高さにすること(スチロール展足は自然にこうなる)




前脚の注意点としては、腿節は少し下げ気味、脛節は体に水平に、フ節はまっすぐ上方を向かせるが、この時できれば触覚とクロスさせるとより良い。だが、これも種類による。頭幅が前胸より狭い種類(シカ、マルバネ、チビ系、ルイス、マダラ、オニ、ルリ系)およびメスなどはクロスさせない方がカッコイイと思う。




次に後脚. 腿節は体の中心線に対して垂直にし、脛節は上翅末端の角度に合わせて斜めにする。フ節は中心線に水平にまっすぐ下を向かせる。

最後に中脚。腿節は少し上げ気味、脛節は先端部が後脚の腿節先端部に来るようにすると良い(これも種類によっては脛節が長い種類もあるため、種類によって変えていく)。フ節は腿節に対してまっすぐでも良いし、体に対して水平でも良い。

爪は開く人と閉じる人がいるが、これも好みによる。開く場合は爪の根示の膨らんでいる部分を摘むと開かせることができるので、そのまま発砲スチロールに差し込んでしまう。

大腮の聞く度は、頭の側縁ラインからそのままの角度で大腮側縁へ続くように開く。が、これも個人の好みによるところが大きいし、種類にもよる。




スチロールに張り付けにした状態で1月ほど保存する。急に乾燥させると、後々展足が狂う場合があるため、出来れば陰干しがよい。また、もし触覚先端部分をシビアな仕上がりにしたい場合は、半日ほど待った「生乾き」の状態なら、ある程度自由に指やピンセットを使ってカタチを整える事も出来る。土屋氏の場合は完全乾燥後、希望箇所を改めて軟化させ、いわゆる「二次展足」を行うが、今回は紙面の都合上省かせてもらった。






トカラノコなど色彩の明るいクワガタは、乾燥しても体内の脂が染み出て、黒っぽくなってしまう事が多い。そこで展足、乾燥後、密閉度の高い容器にアセトンもしくはトルエンを深さ1~3センチ程入れ、その中に虫を裏返しにして浮かし、脂を取り除く。ただし完全に乾燥してから行わないと最終的に色むらやシミになる。

漬け込んだからといって展足が狂うことはないのでご安心を。

また、仮に展足前に脂抜きをしても、軟化の際、また脂が出てくる事が多く、単なる二度手間をくうハメになる。虫の大きさによって漬ける時間も違うが、小型種で5~7日、中~大型種で10~20日くらい漬けた方が良い。フ節や触覚がもろくなるので小型種では取り出す時注意が必要(アセトンでは特に注意)。




脂抜きして乾燥させたらいよいよ針刺し。虫の上翅右上に針を刺すが、あまり上過ぎると裏側に中脚の基節があり、貫通出来ないので気を付ける。土屋氏は上翅会合部近くに刺すようにしている。上翅の頑強なクワガタに針を通すにはかなりの力が必要で、有頭針とはいえ、指で押すとかなり痛いので、このようにピンセットの内側で針を挟んで刺すと良い。





針を途中まで刺したら側面から見て針が垂直に刺さっているか確かめる。垂直になっているようだったらそのまま刺しの場合は台紙に張り付け、その白紙の方に針を刺す。土屋氏はオニ・ネブトから台紙に貼っているようだ。スジは針である。どの大きさから台紙に貼るかは個人の好みで良いと思う。針を刺したら平均台で高さを合わせる。




次に採集地などのデータラベルを作成する。ローマ字でも漢字でもかまわないが、とにかく細かい産地名がわかればよい。そして、採集日付、採集者名も忘れずに書く。
ラベルが出来たら虫を刺した針に同じように刺す。。



標本が出来たら市販の箱に入れる。箱へ入れてからの保存方法としては、一般的には乾燥剤と市販の防虫剤などを入れている方が多いようだが、ナフタリンなどを入れると虫の表面に白く結晶(?)が浮き出る事があるため、よりベストな方法として、やはり前記した四塩化炭素などをお薦めする。四塩化炭素なら標本箱を密閉する前に2~3滴垂らすだけで、各種標本害虫を長期にわたり駆除できる。

(ワイルドプライド刊 KUWATA 1999年7月 p.67〜73 より一部抜粋引用)


奄美大島での食事


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